3月14日はホワイトデーですね。
みなさんお菓子や花束をやったりとったりするでしょうか。
いいもんですよね。私はないですけどね。でもいいもんです。
私にとって3月14日は、私のたった一人の写真の先生 Rik Snowley の命日です。
亡くなったとの知らせをもらったのは
2008年でしたから、もう6年が過ぎたんですね。
最後に会ったのは1997年。イギリスで英語と写真を勉強しながら、
アルバイトをしたり、何もしなかったりの頃です。
ずいぶん年月が経ったような気もしますが、やってる事がなんにも変わっていないようで、
自分で笑ってしまいます。
私はその頃、週に8時間、暗室の授業を受けていました。
正式には2時間しか登録していませんでしたが、
Rikの粋な計らいで暗室だけのワークショップやアドバンストのクラスに潜り込ませてもらってたんです。
授業の後も学校が閉まるまでいてもいいよと言われていて、ずーっと暗室にいましたね。
学校側も知ってて見逃してくれたようです。
肩をいからせた、小さい日本人の女をみんなが面白がって、可愛がってくれました。
ありがたかったですねえ。
日本に帰るとき、ヒースローまで見送りに来てくれました。
今まで黙ってたけど、実はCIAのスパイだったんだよ。と言ったらやたら大喜びしてました。明るい別れでした。
日本に帰ってきてからしばらく、暗室から遠ざかっていました。ずっとやってたわけじゃないんです。時代もデジタル写真になっていましたし。
また始めようと思って、初めての展覧会の作品に取り組んでいた頃の訃報だったわけです。
で、なんでバナナ忌かというと、Rikは当時バナナをよく食べていて。
ぽっちゃり小太りだったので、小腹が空いていたのかな。それじゃダイエットにならないよというほど。
死因はバナナなんじゃないかと本気で思ったくらいです。
インターネットで見つけた亡くなる前の写真はもう私の知らない彼です。
痩せこけてまるで別人のようです。
彼らしさといえば、手にしたカメラと
後ろの戸棚にびっしりと並べられたマーマイトのユーモアでした。
身近じゃない人が亡くなっても悲しいのに
親しい(親しかった)人なら尚のことです。
けれども去っていくものはだんだんと忘れていってしまうものです。
悲しみも薄れていきます。
私はそれでいいんだと思います。
でもRikは赤いランプの暗がりに必ずやってきてくれますから、忘れることはないです。
写真を続けていく限り。
今年もまた9月の展示に向けて作業を始めます。
またよろしくと伝えます。まだもうちょっと続けるみたいなので。